稲憲一郎《record》1973年

 
record
稲憲一郎《record》1973年 カセットテープレコーダー、カセットテープ、マイクロフォン ©稲憲一郎 撮影|稲憲一郎

record2018
稲憲一郎《record》1973/2018年 カセットテープレコーダー、カセットテープ、マイクロフォン ©稲憲一郎 撮影|藤島亮

 

自宅の環境音をカセットテープに録音して、ギャラリーで再生する。次に再生された音とギャラリーの環境音をともに録音して、再び再生する。これを何度もくり返す。稲憲一郎が、美共闘REVOLUTION委員会により1973年に開催された「〈実務〉と〈実施〉・12人展」に発表した《record》は、以上のごく簡潔な作業からなる。「音が重ねられるたびに野外の音は徐々に掻き消され、最後の頃にはうねりを伴う混沌とした雑音になっていた」。

同じ場所で録音と再生をくり返すという作業は当時、稲と同世代の東京の若手作家に共有されていたようだ。川村悦郎の《IMAGE-ON No.3――コンサート・コンサート》(1972)はローリング・ストーンズの音楽を環境音とともに何度も録音、再生する。渡辺哲也の《CLIMAX No.1》(1973)では、6人のパフォーマーが「ナ・ミ・ウ・ツ・ナ・ミ」という言葉を一文字ずつずらしながら発声し、録音を重ねる。視野を広げれば、録音と再生を反復するという方法がこの時期に世界のさまざまな場所で用いられていたことがわかるかもしれない。アルヴィン・ルシエの《私はある部屋に座っている》(1969)が真っ先に思い浮かぶ。

金子智太郎「流動するものへの欲望――稲憲一郎《record》」より

 
 
 
 
日本美術サウンドアーカイヴ──稲憲一郎《record》1973年

2018年1月14〜20日 Art & Space ここから

展示作品
稲憲一郎《record》1973/2018年
稲憲一郎《immature plane 12-110》2012年

テキスト|稲憲一郎/金子智太郎
トーク|稲憲一郎/畠中実/金子智太郎
録音|大城真
写真撮影|藤島亮
リーフレットデザイン|川村格夫


リーフレット
稲憲一郎「45年後の再制作──再び生み出されるもの」2018年
金子智太郎「流動するものへの欲望──稲憲一郎《record》」2018年


カセットエディション
Kenichiro Ina, Staying / Walking, 1972

 
 
 
 
稲憲一郎 略歴

1947 東京都練馬区に生まれる
1972 東京造形大学美術学部絵画科卒業

主な個展(1972年以降)
1972 以降、サトウ画廊・コバヤシ画廊・ときわ画廊・ギャラリー檜・ギャラリー現等多数
1990「さまざまな眼 25」かわさきIBM市民文化ギャラリー/神奈川
1994「「根底への問い」──1970年代の美術」村松画廊/東京
2008 ギャラリー檜/東京(以降10, 11, 12, 14, 16)

主なグループ展(1970年以降)
1969-70「精神生理学研究所」毎月1回郵送による(6回)
1970「Summer Exhibition」Art & Project/アムステルダム
1971「言葉とイメージ」ピナール画廊/東京
1973「〈実務〉と〈実施〉・12人展」ピナール画廊/東京
「京都ビエンナーレ」京都市美術館/京都
1975「AFFAIR & PRACTICE・WHY IT」現代文化センター/東京
1988「彩発」ギャラリー檜/東京
「欲望の海をわたる絵画」川崎市民ギャラリー他
1991「「線の表現」──眼と手のゆくえ」埼玉県立近代美術館/埼玉
1993「再制作と引用」板橋区立美術館/東京
1998「NEW VISION SAITAMA《消えてゆくもの満ちてくるもの》」埼玉県立近代美術/埼玉
「distance no.19 橘田尚之 × 稲憲一郎」ギャラリー檜/東京
2000「distance no.20 北村周一 × 稲憲一郎」ギャラリー檜/東京
2007「Exhibition De collective Van Eelen-Weeber」Kröller-Müller Museum/オランダ
「ART ANTI-ART NON-ART」Getty Research Institute Exhibition Gallery/ロサンゼルス
2008「絵画+写真「絵画に見るもの、絵画からみえてくるもの」」練馬区立美術館+ギャラリー檜/東京
2009「1969-1970 精神生理学研究所(アーカイブズ)」ギャラリー檜/東京
「In & Out of Amsterdam: Travels in conceptual Art 1960-1976」MoMA/ニューヨーク
2010「カテゴリア~視像のゆくえ~」ギャラリー檜/東京
2013「dialogue vol.Ⅰ 高橋圀夫 × 稲憲一郎」ギャラリー檜 plus/東京
2014「dialogue vol.Ⅱ 北村周一 × 稲憲一郎」ギャラリー檜 plus/東京
「美術と印刷物―1960-70年代を中心に」国立近代美術館/東京
2015「dialogue vol.Ⅲ さとう陽子 × 稲憲一郎」ギャラリー檜 plus/東京
2016「dialogue vol.Ⅳ 石村 実 × 稲憲一郎」ギャラリー檜 e・F/東京
2017「dialogue vol.Ⅴ 橘田尚之 × 稲憲一郎」ギャラリー檜 e・F/東京

 
 

過去の企画→