和田守弘《認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL》1973年 オープンリールテープレコーダー、エンドレスオープンリールテープ、スピーカー、黒板、Tシャツ ©和田守弘 撮影者不明
和田守弘《認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL》1973/2018年 オープンリールテープレコーダー、エンドレスオープンリールテープ、スピーカー、写真 ©和田守弘 撮影|藤島亮
会場の床にオープンリールデッキ5台とスピーカー4台が置かれている。奥の壁には1枚の小さな黒板がかかる。ここには日付と「ワタシの肉体の所在地」という言葉、和田のいる場所が書かれている。となりに「0+0≒0 0−0≒0 0×0≒0 0÷0≒0 1+1≒ 1−1≒1 × ≒ ÷ ≒」という数式もある。さらに、壁ごとに1枚ずつ白地の半袖Tシャツが貼られている。胸には「コレハワタシデス」という言葉がプリントされ、和田はこれを着て会場にいる。
すべてのオープンリールデッキはエンドレステープを再生する。4本から和田の声、1本から交通騒音が聞こえる。声の内容は次のとおり。①「これは~である」という自己言及。「~」には「言語」「私」「声」などが入る。②「あ あー い いー う うー…」という五十音。左右のスピーカーから同じような内容が大きくずれて聞こえる。③「~すること」「~べきだ」「~せよ」といったインストラクションまたはモットー。④ウィトゲンシュタインの主に写像理論の引用と③の組みあわせ。
《SELF・MUSICAL》は一見、音による和田の自画像のようだ。黒板によると、彼の「肉体」は会場の外にあることもある。だが、彼の声、彼の意識はいつも会場にいる。語られた言葉から和田の内面や経歴はほとんど読みとれない。だが、出身地の訛りを残した声の響きは、知人ならすぐに彼のものだとわかる。このような解釈はおおむね妥当だろう。しかし、先のTシャツは15枚用意され、和田以外にも数人が着て会場にいたという事実は、この解釈を混乱させる。
日本美術サウンドアーカイヴ──和田守弘《認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL》 1973年
2018年4月8日〜14日 Art & Space ここから
展示作品
和田守弘《認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL》1973/2018年
和田守弘《Work’96》1996年
和田守弘《認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL》1973/2018年
和田守弘《Work’96》1996年
テキスト|和田守弘/金子智太郎
トーク|畠中実/金子智太郎
録音|大城真
写真撮影|藤島亮
リーフレットデザイン|川村格夫
トーク|畠中実/金子智太郎
録音|大城真
写真撮影|藤島亮
リーフレットデザイン|川村格夫
リーフレット
「和田守弘《認識に於ける方法序説 No.l SELF・MUSICAL》書き起こし」1973/2018年
金子智太郎「名もなき声──和田守弘《認識に於ける方法序説 No.l SELF・MUSICAL》」2018年
「和田守弘《認識に於ける方法序説 No.l SELF・MUSICAL》書き起こし」1973/2018年
金子智太郎「名もなき声──和田守弘《認識に於ける方法序説 No.l SELF・MUSICAL》」2018年
和田守弘(1947-2007)略歴
1947 香川県に生まれる
1973 多摩美術大学絵画科油画専攻卒業
1973 多摩美術大学絵画科油画専攻卒業
主な個展
1971「自然に於ける黙示録」田村画廊/東京
1971「自然に於ける黙示録」田村画廊/東京
1972「遥かモウビ・ディックの白い巨体を求め…」田村画廊/東京
1973「認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL」田村画廊/東京
「認識からの方法序説 No.Ⅲ Mr. NOBODY 言葉の中のモニュメント」田村画廊/東京
1974「アプリカシオン No.Ⅰ」田村画廊/東京
「アプリカシオン No.Ⅳ 用在と様在から……」ときわ画廊/東京
1975「表述 No.Ⅰ ─applicationあるいはmimesisを背景として」真木画廊/東京
「表述 No.Ⅱ ─変換という流れの中の真実と虚構」白樺画廊/東京
1976「表述 No.Ⅲ ─日常のあいだの意味の関係」田村画廊/東京
「表述 No.Ⅴ ─繰り返される日常からの導出から導出へ」白樺画廊/東京
「表基 No.Ⅰ(実体鏡としての用在) ─表述 No.Ⅶ」真木画廊/東京
1977「表基 No.Ⅱ(媒律性としての用在) ―表述」ときわ画廊/東京
「表基 No.Ⅲ(持続する意味の内在について) ─表述」田村画廊/東京
「表基 No.Ⅴ(持続と関係から) ─表述」ときわ画廊/東京
1978「表基 No.Ⅵ」真木画廊/東京
1979「表基 No.Ⅶ ─誘引作用」ときわ画廊/東京(’80 ’81)
1981「表基 ─変奏」画廊パレルゴン/東京
1982「表基 ─変奏」ときわ画廊/東京(’84)
1985「表基体」ときわ画廊/東京(’87 ’90 ’97)
1987「表基体」エスェズギャラリー/東京(’89)
1992「表基体 ’92 ―水膜の向こう側」島田画廊/東京
1994「表基体 ’94」ギャラリースペース21/東京
1995「表基体 ’95」ZEN工房/愛媛
1998「新作油彩画 ─Recent Works」オオヌキアンドアソシエイツ/東京
2000「再生に向かって ─ラスコーからの新たなる旅立ち」田中画廊/東京
主なグループ展(1970年代)
1971「第6回 国際青年美術家展」高輪美術館/東京
「第6回 ジャパン・アート・フェスティバル」東京国立近代美術館/東京 他
1972「DO IT YOURSELF KIT」銀座ソニービル/東京
「第2回 ビデオ・ショー 開かれた網膜・わしづかみの映像」アメリカンセンター/東京
1973「フィルムメディア・イン・タムラ ’73 ─フィルムによる」田村画廊/東京
1974「第3回 ビデオ・ショー TOKYO-NEW YORK「VIDEO EXPRESS」」天井桟敷館/東京
「第11回 日本国際美術展 複製、映像時代のリアリズム」東京都美術館/東京、京都市美術館/京都
「第14回 セント・ジュード・招待ビデオ・ショー」サンタ・クララ大学/カルフォルニア
「映像の表現 ’74」アートコアホール/京都
1975「VIDEO ART」シカゴ美術館/シカゴ
「フィルムメディア・イン・タムラ ’75 ─ビデオによる」田村画廊/東京
「MAKI SPACE No.l (by Film)」真木画廊/東京
「Video Work Shop」天井桟敷館/東京
1976「京都ビエンナーレ」京都市美術館/京都
1977「第7回 国際ヴィデオ・エンカウンター」ミロ美術館/バルセロナ
「MAKI SPACE No.ll ─VIDEO IN TOKYO」真木画廊/東京真木画廊/東京
1978「第4回 100フィート・フィルム・フェスティバル」イメージフォーラム/東京
1979「今日の作家 ‘79展」横浜市民ギャラリー/神奈川