髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》1974年

 
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髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》1974年 カセットテープレコーダー、カセットテープ ©髙見澤文雄 撮影|矢田卓

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髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》1974/2018年 カセットテープレコーダー、カセットテープ ©髙見澤文雄 撮影|藤島亮

 

このゲーム(作品行為)のルールは、以下の通りである。

1. 睡眠時にベッドの中で、口元にマイクロホンを設置しテープレコーダーを録音状態に作動させたまま、声を出して1から意識のある限り、数を数え続け録音する。

2. 録音されたテープを再生し、自身で聞きながら、数の記録と同時に、1を0として1から始まる期間を数ごとに何分何秒単位で記録する。

髙見澤文雄はこのルールにしたがい何夜も数をかぞえてカセットに録音した。そのうちの15個がラジカセに入れられ、第11回日本国際美術展の「複製、映像時代のリアリズム」と題された国内部門に出品された。15台のラジカセは記録用紙とともに壁にそって等間隔に並べられ、いっせいに彼の声を再生した。本江邦夫は90年に、この作品が「いまや伝説と化しつつある」と述べた。この言葉は鑑賞者に刻まれた印象の深さだけでなく、音を用いた70年代の美術に共通する事情をあらわす。こうした作品は伝聞を通じてしか接することができなかった。

山本育夫は98年に、髙見澤にとって《柵を越えた羊の数》は最初の転換点だったと書いた。寺山修司がこの作品に感銘を受けて、論文「偶然性のエクリチュール」のなかで大きく取りあげた。この文章における記憶をめぐる記述に、髙見澤は触発された。彼は「それまで漠然と考えていた『記憶』についてのこだわりに、まっすぐ光を当てられた気がした」。記憶は以降、彼の作品にとって自他ともにみとめる最重要モチーフになった。

金子智太郎「記憶するために跳ぶ――髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》」より

 
 
 
 
日本美術サウンドアーカイヴ──髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》1974年

2018年2月11〜17日 Art & Space ここから

展示作品
髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》1974/2018年
髙見澤文雄《波の網、網の波》2018年

テキスト|髙見澤文雄/金子智太郎
トーク|髙見澤文雄/畠中実/金子智太郎
録音|大城真
写真撮影|藤島亮
リーフレットデザイン|川村格夫

リーフレット
高見沢文雄「「記憶」·「柵を越えた羊の数」·「偶然性のエクリチュール」と「ヘラクレイトスの河」」1988年
金子智太郎「記憶するために跳ぶ――髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》」2018年

 
 
 
 
髙見澤文雄 略歴

1948 長野県生まれ
1971 多摩美術大学絵画科油画専攻卒業

主な個展
1971 田村画廊/東京(74)
1972 ときわ画廊/東京(77, 78, 80, 82)
1973 楡の木画廊/東京
1975 真木画廊/東京
1976 白樺画廊/東京
1984 ギャラリー手/東京
1985 ギャラリー16/京都(87)
ギャラリーなつか/東京(91)
1987 なびす画廊/東京(89)
1988 創庫美術館 点/新潟
1990 ヒノギャラリー/東京(92, 93, 95, 96, 97, 99, 00, 03, 05, 07, 11, 12, 14, 16)
游・アートステーション/長野
1992 スカイドアアートプレイス青山/東京

主なグループ展
1969 ルナミ画廊/東京
1970「京都アンデパンダン展」京都市美術館/京都
1971 村松画廊/東京(83)
「Bゼミ展」横浜市民ギャラリー/神奈川
ギャラリー16/京都(73)
1973「〈実務〉と〈実施〉・12人展」ピナール画廊/東京
「京都ビエンナーレ」 京都市美術館/京都
「映像表現 ’73」 京都市美術館/京都
1974「第11回 東京ビエンナーレ」 東京都美術館/東京
「映像表現 ’74」 アートコアホール/京都
1975「フィルム・メディア・イン・タムラ ’75―ビデオによる」 田村画廊/東京
「AFFAIR & PRACTICE・WHY IT」 現代文化センター/東京
1976「京都ビエンナーレ」 京都市美術館/京都
1977「Tokyo Geijutsu-4」 田村画廊/東京
1978「Tokyo Geijutsu-4」 村松画廊/東京
「第14回 今日の作家 <表現を仕組む>展」 横浜市民ギャラリー/神奈川
1982「自在と自制の空間」 代々木アートギャラリー/東京
1984「第20回 今日の作家 <『面』をめぐる表現の現在>展」 横浜市民ギャラリー/神奈川
ギャラリー手/東京
1985 渋谷西武百貨店/東京
「’85 涸沼・土の光景展」 涸沼宮前荘敷地/茨城
「背後の解読展」 山梨県立美術館/山梨
1986「The Three Artists」 ときわ画廊/東京
「TAMA VIVANT ’86」 渋谷西武シードホール/東京
「Monologue/Dialogue」 なびす画廊/東京
1987「発熱する表面」 福岡市美術館/福岡
1989「第8回 平行芸術展」 エスパスOHARA/東京
1990「今、ドローイング展」 ヒノギャラリー/東京
「Small Size Collection」 ギャラリーなつか/東京
1991「ドローイング 4人展」 ヒノギャラリー/東京
1992「形象のはざまに」 東京国立近代美術館/東京、国立国際美術館/大阪
「ビデオ・新たな世界──そのメディアの可能性」 O美術館/東京
1993「再制作と引用」 板橋区立美術館/東京
1995「絵画、唯一なるもの」 東京国立近代美術館/東京、京都国立近代美術館/京都
1999「二人展」 ヨコハマポートサイドギャラリー/神奈川
2006「東野芳明を偲ぶオマージュ展 水はつねに複数で流れる」 ギャラリーTOM/東京
2008「所沢ビエンナーレ・プレ美術展 引込線」 西武鉄道旧所沢車両工場/埼玉
2009「第1回 所沢ビエンナーレ美術展 引込線」 西武鉄道旧所沢車両工場/埼玉

パブリック・コレクション
東京国立近代美術館/東京

 
 

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