河口龍夫《345600秒》2021年

 
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河口龍夫《172800秒》1971年 オープンリールテープレコーダー、8ミリカメラ ©河口龍夫 撮影者不明

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河口龍夫《345600秒》2021年 カセットテープレコーダー、8ミリカメラ ©河口龍夫 撮影|藤島亮

 

当時新京極の繁華街にあったギャラリー16の通りに面した壁はガラス張りだった。1971年に開催された河口龍夫の個展「172800秒展」を外からのぞいた人は、設営前だと思ったかもしれない。室内には芳名帳を置いた机と、壁に貼られた展覧会リーフレット以外に、入口から見て正面の壁の中央に取りつけられた8ミリカメラと、床に置かれたオープンリールテープレコーダー、そこから無造作に伸びるコードの先についたマイクロフォンだけがあった。1.8メートルほどの高さに固定されたカメラは、セルフタイマーで8秒に1コマずつシャッターを切った。テープレコーダーは開廊中ずっと周囲の音を録音した。会期は6日間、開廊は1日8時間、合計172800秒だった。河口は個展終了後、使用した6本の8ミリフィルムと8本の7号オープンリールテープを一度も再生せずに、鉛の薄い板で覆って封印し、《光景の吸収》《音の吸収》というタイトルをつけた。

金子智太郎「日常のしがらみのしぶとさ──河口龍夫《172800秒》」より

 
 
 
 
日本美術サウンドアーカイヴ協力──河口龍夫《345600秒》2021年

2021年4月23日〜5月22日 河口龍夫「1971年の172800秒から2021年の345600秒へ」SNOW Contemporary

展示作品
河口龍夫《345600秒》2021年 他

テキスト|河口龍夫/金子智太郎
トーク|畠中実/金子智太郎
写真撮影|藤島亮
リーフレットデザイン|川村格夫
協力|日本美術サウンドアーカイヴ(金子智太郎)


テキスト
河口龍夫「1971年の172800秒から2021年の345600秒へ──あるいは時のブーメラン」2021年
金子智太郎「日常のしがらみのしぶとさ──河口龍夫《172800秒》」2021年

 
 
 
 
河口龍夫 略歴

1940 兵庫県神戸市に生まれる
1962 多摩美術大学絵画科卒業
1965 グループ「位」結成
1983 筑波大学芸術学系助教授(1991年 同教授)

主な個展
1981「河口龍夫展」アートフロントギャラリー/東京
1990「今日の作家たちIII 河口龍夫」神奈川県立近代美術館/神奈川
1997「関係―河口龍夫」千葉市美術館/千葉
1998「河口龍夫―封印された時間」水戸芸術館現代美術センター/茨城
1999「河口龍夫 関係−京都」京都市美術館/京都
2003「河口龍夫 大地と水と植物」ヒルサイドフォーラム/東京
「日本現代美術 河口龍夫」釜山市立美術館/釜山
2004「河口龍夫 関係―時のフロッタージュ」名古屋市美術館/愛知
2005「時間の時間 河口龍夫展」国際芸術センター青森/青森
2007「河口龍夫 見えないものと見えるもの」兵庫県立美術館/兵庫、名古屋市美術館/愛知
2008「無限への立ち位置―河口龍夫の1970年代」宇都宮美術館/栃木
「DARK BOX 2008―時間をもった闇」名古屋市美術館/愛知
2009「河口龍夫展 言葉・時間・生命」東京国立近代美術館/東京、名古屋市美術館/愛知
2012「光あれ!河口龍夫―3.11以後の世界から」いわき市立美術館/福島
2015「河口龍夫 垂直の時間、あるいは階段時間」SNOW Contemporary/東京
「河口龍夫 闇の時間」カスヤの森現代美術館/神奈川
2017「河口龍夫―眼差しの彼方」金津創作の森/福井
2018「河口龍夫―ちのこうや」黒部市美術館/富山
2019「河口龍夫 時の羅針盤」越後妻有清津倉庫美術館/新潟

主なグループ展
1970「第10回 日本国際美術展 人間と物質」東京都美術館/東京、京都市美術館/京都
1973「第8回 パリ青年ビエンナーレ」パリ国立近代美術館/パリ
1986「前衛芸術の日本」ポンピドーセンター/パリ
1989「大地の魔術師たち」ポンピドゥー・センター/パリ
1994「1945年以降の日本の美術」グッゲンハイム美術館他/ニューヨーク
2000「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」新潟(’03, ‘12)
2004「痕跡―戦後美術における身体と思考」京都国立近代美術館/京都
「グループ〈位〉展」兵庫県立美術館/兵庫
2010「瀬戸内国際芸術祭」香川
2013「二年後。自然と芸術、そしてレクイエム」茨城県近代美術館/茨城
2015「展、再演」東京国立近代美術館/東京
2017「奥能登国際芸術祭」石川

 
 

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