日本にはこれまでに、美術館や画廊、アトリエや公共空間でさまざまな音を鳴り響かせてきた美術家がいる。しかし、ほとんどの音は鳴り止んでしまえば、再び聞くことがかなわなかった。視覚資料を中心とする美術史のなかで、音をめぐる情報はどうしても断片的なままに留まってしまう。日本美術サウンドアーカイヴはこうした美術家たちによる参照しにくい過去の音にアクセスしようとするプロジェクトである。
作家や関係者へのインタビュー、文献調査、作家が所有する録音などを通じて、過去の作品にまつわる情報を収集し、整理する。そして、作品の再制作や再演を作家に依頼し、もしくは自分たちの手で行い、展覧会、イベント、レコードなどのかたちで発表していく。このような活動を通じて、日本美術における音の意義を検討し、その可能性を開くための基盤をつくりだしたい。
日本美術における過去の音について考えようとするとき、現代の私たちはたくさんの問いに出会う。それは各時代の美術の動向のなかでいかに位置づけられたのか。音楽をはじめとする同時代の他の芸術といかに結びつき、区別されたのか。同時代の聴覚文化や視覚文化といかに関わってきたのか。これらの問いを前にした人が、まず音に向きあうことから探求をはじめられるようにすることは、このプロジェクトの大きな目的のひとつである。
2017年10月

画像提供|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]
主催者プロフィール
金子智太郎 https://tomotarokaneko.com/
1976年生まれ。愛知県立芸術大学芸術学専攻准教授。専門は美学、聴覚文化論。最近の仕事に、編著『音の本を読もう──音と芸術をめぐるブックガイド』(ナカニシヤ出版、2024年)。
活動記録(これまでの企画→)
2017年
10月30日 活動公開
2018年
1月7日 日本美術サウンドアーカイヴ──堀浩哉《MEMORY-PRACTICE (Reading-Affair)》1977年
1月14日〜20日 日本美術サウンドアーカイヴ──稲憲一郎《record》1973年
2月11日〜17日 日本美術サウンドアーカイヴ──髙見澤文雄《柵を越えた羊の数》1974年
3月11日〜17日 日本美術サウンドアーカイヴ──野村仁《音調、強度、時間を意識して、レコード(糸)を操作する》1973年
3月25日 日本美術サウンドアーカイヴ──渡辺哲也《CLIMAX No.1》1973年
4月1日 グレイト・ホワイト・ライト「グレイト・ホワイト・ライト」LP発売
4月8日〜14日 日本美術サウンドアーカイヴ──和田守弘《認識に於ける方法序説 No.Ⅰ SELF・MUSICAL》1973年
6月25日〜29日 日本美術サウンドアーカイヴ 2018年1月7日〜4月14日 資料展
11月28日 サイト公開
2019年
2月20日~3月9日 日本美術サウンドアーカイヴ──今井祝雄《TWO HEARTBEATS OF MINE》1976年
7月21日 日本美術サウンドアーカイヴ──新里陽一《帝王切開》1973年
9月1日 堀浩哉「リーディング・アフェア」CD発売
11月16日 日本美術サウンドアーカイヴ──雅子+尚嘉《SEA FOR FLOOR》1972年 彦坂尚嘉による再演と展開
2020年
8月3日 Production-Gas, Gas’ Disk, 1970 カセットエディション発売
8月3日 Bandcampアカウント公開
11月14日〜12月25日 日本美術サウンドアーカイヴ協力──倉重光則《1974年の七つのパフォーマンス(再現)》2020年
2021年
2月11日 日本美術サウンドアーカイヴ──柴田雅子《AFFECT-GREEN Performance》1976年
4月23日〜5月22日 日本美術サウンドアーカイヴ協力──河口龍夫《345600秒》2021年
2022年
6月23日〜27日 日本美術サウンドアーカイヴ──上田佳世子、渡辺恵利世《トートロジー》1973年
2023年
8月18日 日本美術サウンドアーカイヴ リーディングセッション
連絡先
japaneseartsoundarchive -at- gmail.com